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最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)1415号 判決 1968年6月21日

上告人

中田きぬ

代理人

三治綾蔵

被上告人

鈴木あき子

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人三治綾蔵の上告理由(一)について。

愛知県知事による本件許可申請書返戻の趣旨に関してなされた原判決の事実認定はその挙示する証拠に照らして是認できるし、所論摘示の原判決の判断は、その挙示する事実関係に基づき正当である。

原判決には所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に立ち、原審の認定にそわない事実を主張して原判決を非難するに帰し、採ることができない。

同(二)について。

農地を農地以外の土地に転用する目的のもとに売買契約を結んだ売主は、買主と協力して農地法五条所定の知事に対する許可申請手続をして権利移転の許可を受け、売買契約を効力あらしめるよう、信義則上要求されるところに従つて努力すべき義務を負うものであり、買主も亦売主と協力して右同旨の所為にいずべき義務を負うものである。そして、右のような農地の売買契約につき民法五五七条所定の解約手附が交付された場合において、売主、買主が連署の上農地法五条に基づく許可申請書を知事宛に提出したときは、特約その他特別の事情のないかぎり、売主、買主は、夫々、民法五五七条一項にいわゆる契約の履行に着手したものと解するのが相当であるし、右許可申請書が知事によつて返戻されるという原判決認定の事実関係が生じても、右履行の着手によつて生じた解約手附に関する民法五五七条一項所定の効果が、それによつて、左右されるものではない。

また、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、右に判示する特別の事情が存するものとは認められない。

結局、右と同趣旨の原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に立つて正当な原判決を非難するに帰し、採ることができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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